診療室に入ると目を引くベビーベッド
診察室に入るとユニットの横に一台のベビーベッドが目に入ります。
私ごとになりますが、24年前の秋に双子の娘たちの母になりました。
長い不妊治療の末にやっと授かった命。
そのわが子の子育てに使った思い出の詰まったベビーベッドを診察室に職場復帰した時に持ち込んだことにはある理由があります。
産後マタニティーブルーを経験
両家の実家が遠方であったため子供が病気をした時、また自分が体調を崩したときにはどうやって2人の子供を病院へ行こうか、誰に預けたらよいかと心細い思いをしたものです。
その当時頼りの主人も夜間9時まで診療をしており帰宅の遅い夫を頼りにすることはできませんでした。
また初めての育児は不慣れなことばかり。
まずは授乳でつまずきました。溢れるように出てくる2人分の母乳。
帝王切開での双子の出産であったため産後の入院も人より長くかかりました。
そのため母乳を絞って哺乳瓶で飲ませる時間が長かった子どもたちは直接私の乳首から吸わなくなりました。
自宅に戻ってからは、帝王切開の傷が痛み自分の乳首から母乳を吸わせることの大切さが分かっていてもそれができず、また母乳を絞ることでの腱鞘炎、お乳の痛み、哺乳瓶洗いにくたくたの毎日。
授乳という素晴らしい育児に幸せを見出されるはずが現実は違った、こんなはずではなかったとマタニティーブルーにもなりました。
結局離乳食が始まる頃に自分が疲労で倒れ実家で療養することになりました。
幸い母や家族の愛に包まれた協力のお陰で子ども達も私も元気になることができました。
子育て経験を生かした診療室作り
私だけではなく子育てはやってみるとどなたでも授乳や離乳食、様々な成長過程での悩みを色々抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
だからこそ私は子ども達が保育園に上がり野上歯科医院に職場復帰した時に一番にしたいと思ったことがありました。
それは自分のこの辛い経験を活かして子育て中のお母さま方にやさしい診療室を作ること。
核家族化が進んだ現代、同じ思いや心細い思いをしているお母さまは自分以外にもたくさんいるはず。
そんなお母さま方が安心して通院できる診療室づくりをスタッフの協力を得ながらしてまいりました。
あれから約20年の月日が流れ、野上歯科医院の名物ベビーベッドも先日2代目になりました。
それだけ多くのお母さま方がこのサービスに喜んでいただき、母子一体のむし歯予防、歯科治療に通っていただきました。
たくさんの涙あり笑いありのドラマがこの空間から生まれました。
野上歯科医院に通われているお子さまはみんなこのベビーベッドが大好きです。そして楽しく通ってくれるほとんどのお子さまにむし歯がありません。嬉しい限りです。
子どものお口の健康を守るお手伝いをします
妊娠中や産後の授乳期はホルモンバランスが大きく変化し、つわりや育児からくる負担、食生活の変化からむし歯・歯周病のリスクが高くなります。
女性が一生涯で歯や口腔環境が悪くなるリスクの高い時期でもあります。
この様な大切な時を子どもを預かってくれる人がいないから歯科医院に通えないと諦めてほしくありません。
お母様のマタニティー検診、産後検診から健康な口腔内を取り戻し母子一体での予防の大切さを知っていただきたい。
この様な思いからお母さまが安心して通える診療づくりに力を入れております。
食育と虫歯予防の関係をお伝えします
また「一生むし歯ゼロ」を目指すために3歳までに最も大切なことは何だと思われますか?
実は歯へのアプローチだけではなく「食べ方」など食育(歯科からの食育)に注目することが大切なのです。
そのためには噛めるお口を作っていくための授乳、抱っこの仕方、規則正しい生活、手掴みによる離乳食をどの時期からどのように進めるかといったことをお母さま方に知っていただくことが大切です。
まだまだ微力ではありますがそうした考え方をお伝えできるようにもなりました。
皆様のご来院を心よりお待ち申し上げております。
野上歯科医院 野上恵子