グラン トリノを観ました
クリント イーストウッド監督の昨年度キネマ旬報ベスト1に輝いた
グラン トリノを観ました。
グラン トリノとは主人公が大切にしている車の名前で
主人公の魂そのものです。最後にその魂を肉親ではなく他人に譲るシーンが
出てきます。
また主人公が死ぬシーンは残された者の立場を考えぬいた
結論である事がよく理解できてジーンときました。
許されざる者やぺールライダーとは全く違うラストシーンに
監督の心境の変化が見て取れます。
それは決して老いたという事ではなく、目の前に迫った死を
どういう風に受け止めるのかが固まってきたように感じました。
主人公は隣の家に住む姉と弟を命をかけてギャングから守ろうとします。
最初は黄色人種という偏見で見ていましたが、少しずつ心を開いていきます。
主人公は寡黙であり、男はこうであるというはっきりとした美学を持っています。
たとえ無名であってつつましい生活を送っていたとしても個人の哲学と誇りを持った
男をイーストウッドは見事に演じ切っています。
恐らくは隣家の少年に一生影響を与える程の立派な行動を取ったと思います。
この監督は老いても誠実でかっこいい男を描かせたら天下一品です。
実績や数字に振り廻されるのではなくどういう人生を送り、何を残せるのか?
私もそういう事を考えなければならない年齢になったという事でしょう。
またこの映画の中では牧師が重要な役割を果たしています。
最初はことごとく忌み嫌っていたにも拘らず、最後は遺言状を任せる
程、信頼しきっていました。
亡くなった奥さんの希望が教会へ行って懺悔をして欲しいという事だったのですが、
本当にお互いを理解し合っていた夫婦だった事がしのばれて見事な演出でした。