開業36周年を迎えて
最近同じ治療をしていても何故予後に大きな違いが生まれるのか私なりの考えをお伝えしたいと思います。
全顎的な治療をしたとしても全く壊れてくることもなく20年以上も経過しているケースは、間違いなく患者さんが健康体である場合に限られています。
恐らくは免疫系も正常で唾液のphも中性か弱アルカリ性と思われます。
つまり口の中を幾らいじくりまわしたところで保つか保たないかは全身的な要因で決まるという事なのです。
むし歯も歯周病も全身疾患との関連から起こるとすれば健康な人の歯を削る必要性などないのではないかと思います。
唾液が正常に働いて、全身が健康な方であれば多少むし歯になったとしても、むし歯が止まって歯が再石灰化する可能性が高いと思います。
ところが今の日本の歯科健康保険では経過観察する点数はありません。
だから誰もやろうとはしない。
これだけ国民に健康志向があふれているのにも拘わらず歯科だけは予防にシフトしようともしない。
実際ドイツの歯科は予防中心の保険制度に変わって成功しています。
戦後から高度成長期のむし歯の洪水の時代ならいざ知らず、戦後70年を経過してもまだ昔ながらの制度を延々と続けている国は果たして先進国と呼べるのでしょうか?
私はフィンランドに渡航した20年前からその事を思い続けてきました。
日本とフィンランドのどちらが先進国なのかとGÐP等では決してわからない真実があると思います。
今ウクライナはロシアからの侵略と必死に戦っています。
20年前にフィンランドの学生とロシアの脅威について話した事があったのですが、彼はもしロシアから攻撃されたら祖国を守るために自分も必死で戦うと言っていたのを思い出します。
それだけ国を愛しているという事なのでしょう。
日本の若者にも聞いてみたいものです。
ここからはあくまで私の私見です。
残念ながら私の祖国である日本は民主主義国家を標榜してはいますが、本当の意味では民主主義国家ではないと思います。
沖縄の例を取ってみても、国の代表が守ろうとしているものは国民ではなく国体そのものとしか思えない。
フィンランドの若者は国からの強制ではなく自ら望んで志願しようとしているのです。
ここに大きな差があると思います。
国民が自ら望んだことに対して国が動くのが、私は民主主義だと思います。
また今の不景気は協調性や融和を尊び個人の突出した能力を認めない国民性も一つの原因ではないかと思います。
また高度成長期の成功体験があるせいで、国も企業も硬直した制度を大きく変えられない。
フィンランドのような小さな国では無駄や失敗は決して許されない。
もう一度民主主義の原点に戻って、国民の健康を本当に望むのであれば、歯科は予防中心に変えるべきだと私は思います。
一度制度を壊せば混乱は起こると思いますが、そこから再生への道は必ず見つかると思います。