N様の治療
昨年の秋から治療にお見えになっていたN様の治療が終了しました。
私が佐藤歯科に勤務していた時からの患者様なのでかれこれ25,6年のお付き合い
になります。
矯正、インプラントと複雑な治療にも手を出していくと患者様の対応に神経を使い正直
ヘトヘトになる事もあります。
ただ今日のN様のように治療がうまくいって患者様にも喜んでもらえると本当に歯科医になって
良かったと心の底から思えるのです。
私は昔は総義歯が苦手でした。
そこで丁度10年前に三鷹で行われていた仙台で開業されている阿部晴彦先生のセミナー
を受講しました。
その後総義歯を何症例かこなしある程度自信がついてきましたが、今度は歯のある人
つまり有歯顎にも阿部先生のshillaシステムが応用できないかと思い
ハーマンズで行われていた阿部先生のセミナーに5年前に再び参加しました。
これで義歯に関してはある程度解ったと自負していました。
ところがその自負は今から思うとあまりにも浅はかでした。
総義歯補綴は奥がとても深く、後に生まれて初めて義歯を入れられる患者様で
私は総義歯の難しさを思い知らされるのでした。
ティッシュコンディショナーを使っても義歯の辺縁の決め方は昔と変わらない事と
材料が変わったことによって硬さのコントロールに熟練を要する事に気がつきました。
そしてティッシュコンディショナーを使うとどうしても義歯の辺縁が厚くなる事にも。
そこの部分は学問ではなく良い義歯を作りたいという探求心を持って手探りで解決していくしかないこと
にも気付きました。
又入れ歯の高さを決める咬合採得の重要さも改めて再認識しました。
そして歯があった時の写真がとても参考になることも。
結局総義歯は過去を遡る考古学に似ています。
今は私自身が総義歯作りの本質に近ずいて、その醍醐味に触れつつあります。
かつて苦手だった総義歯が今では歯科医師として生きていくうえでの生きがいのひとつに
なりつつあります。
決して100%の出来栄え等あり得ません。
だからこそ面白いのかもしれません。