心をつなぐ歯科医院|まもなく40周年川崎市・野上歯科の地域医療への想い

高齢者と介助者の手

ご挨拶

多摩川の土手を愛犬モナ君とお散歩していると、植え込みから金木犀の香りがふんわりと漂ってきました。
長かった暑い夏もようやく終わり、季節は秋へと移り変わりましたね。
夕方にはベランダからセピア色の夕焼けを眺める日が多くなりました。

皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。
夏の疲れが出やすい時期です。体調に気をつけて、どうぞご自愛ください。

長くお付き合いしてる患者様との日々

来年で野上歯科医院は開業40周年を迎えます。
南武線平間駅前で、地域医療に長く携わらせていただいております。
長く開業して、院長や私たちも年を重ねましたが、通ってくださる患者様もずいぶんとご高齢になられました。
長年通ってくださった方の中には、お亡くなりになった方や、ご病気・足腰の不調で通院が難しくなった方も少なくありません。
寂しさとともに、これまで来院いただいた患者様やご家族に、改めて感謝の気持ちでいっぱいです。

今日は、そんな患者様の中からTさんのお話を少しご紹介したいと思います。

Tさんは現在80歳。
この春、7年ぶりに当院へ通院されるようになりました。
7年の間にはコロナ禍などいろいろなことがあったのでしょう。久しぶりにお会いしたTさんには、大きな変化が見られました。

認知症を発症されているようで、ほとんど会話ができない状態でした。
それでも昔の記憶を頼りに、古くなった診察券と千円札、そして保険証を握りしめて階段を上ってこられたのです。
主訴は「前歯が壊れた」とのことでした。

もともと几帳面な方だったこともあり、欠けた前歯の修復以外には大きなむし歯や歯周病の進行もほとんどありませんでした。
主訴の治療を終えた後は、月に一度クリーニングに通っていただくことにしました。

数年ぶりに当院に来られたTさんは、受付で私の顔を見るなり、全身で「ここに来られたこと」「私に会えたこと」を泣きながら喜ばれました。
懐かしさというよりも、心から“安心した”という表情でした。

Tさんのお話の中からわかったのは、歯が欠けた際に近くの歯科医院にも行かれたそうですが、認知症の影響で会話が難しく、予約の時間も間違えてしまうことが続いたようです。
それがきっかけで通うのが難しくなり、かすかな記憶を頼りに、再び野上歯科医院を訪ねてきてくださったとのことでした。
待合室で私の顔を見た瞬間、涙が止まらなかったと聞き、胸が熱くなりました。
どんなに寂しく、不安な時間を過ごされていたことでしょう。

「同居する息子さんは?」とお尋ねすると、朝早く出勤し、夜遅く帰宅されるとのこと。
お母さまにどう対応したらよいのかわからず、戸惑っていらっしゃるようでした。
お嬢さんであれば細やかに動ける場面もあるかもしれませんが、男性の息子さんとの同居では難しいこともありますね。

医療関係者ができる社会的な関わり方

ここ数年、Tさんに限らず、急に加齢や認知症が進み会話が難しくなる方、予約時間がわからなくなってしまう方などが増えています。
お一人おひとりに丁寧な説明や対応を心がけていますが、スタッフの人数や時間の都合で、どうしても十分な対応ができない日もあります。

そんなとき私は、独居の高齢者の方や、ご家族がいても公的サービスが十分に受けられていない方については、管轄の区役所へ連絡をし、地域包括支援センターの職員の方につないで、必要なケアやサービスが受けられるようにお手伝いしています。

日本は本当に良い国です。
地域のつながりや、私たち医療関係者のちょっとした勇気と行動で、ヘルパーさんの派遣やデイサービスの利用、通院付き添いなど、さまざまなサポートが可能になります。

Tさんのように、ご家族が「どう関わったらよいかわからない」と悩まれている場合も、社会全体が関わることで少しずつ良い方向に変わっていくと思います。
決して簡単な道のりではありませんが、私は“お節介な人のひと声”が必要だと感じています。

これからもTさんが安心して歯のお掃除に来てくださるよう願っています。
歯のクリーニングだけでなく、心のケアの場として、少しでもホッとできるオアシスでありたいと思います。

確かな知識と温かい気持ちの歯科医院

受付、アシスタント、歯科衛生士、歯科医師──
それぞれの立場や資格は違っても、「確かな知識と温かい気持ち」を共通の理念として、これからも毎日、患者様をお迎えしてまいります。

「ゆりかごから最後まで」
大切な患者様と、これからも歩んでいける野上歯科医院でありたいです。

むし歯予防マイスター®

野上歯科医院 hahahaサロンさくらんぼ🍒ロイヤルむし歯予防マイスター®野上恵子